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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第12章 ~affection~

そして、どうして今思い出したんだろ。
「サク?」
再びルカは怪訝そうにサクナを見る。
「人ってなんてたくさんの物をしまっているんだろ。なんてたくさんのことを忘れているんだろ」
あんなに気になったのに今の今まで忘れていた。
「些細なことだからじゃない?」
「そうなのかな…………」
思い出してしまえば、どうしてと思うほど大切な想い出のような気がする。
人はたくさんの思い出がある。
サクナが初めてルカに会ったのは、緑の海が広がる高台。祭壇のあるあの場所だった。
太陽のようなポカポカと照らす暖かな甘い香り。
だけど、その少年は、とても悲しい色の眼をしていた。
だからすごく気になった。
抱きしめてあげたくなるそんな切ない表情。
そして、その少年がまた笑顔になってくれたこと。夏の太陽みたいな笑顔を見せていた。
それが、ルカだったんだ。

