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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第15章  誕生祭 ~舞踏会の華たち~ (前編)

「熱を出したときは汗をかくと良いんだよ。もっと汗かく方法あるけど流石にね」

 真剣な表情で言うから、本気なのか冗談なのかは謎だが。なんにせよ暑くて敵わない、頬が紅くなるのも自然と言えよう。

「ん……顔が……赤い。熱が上がったのかな」

「むしろ暑いんだけど……脱ぎたいコレ」

「んー、ダメ。病ははじめが肝心だ。眠いだろサク寝てていいよ」

 そう言われてもスッカリ目が覚めてしまった。
 そして暑くて体調どころではない。


「ねぇルカ別にどこも悪くないよ? むしろ暑すぎて余計具合が悪くなりそうだよ」


 熱があるのかどうだかわからないが汗が躯から滲みでるのは確かだ。

「なあルカ……本当に体調悪いのかサクは。こいつは昔から病気知らずの健康体だけが取り柄なんだぞ?」


 些か疑問を思い始めたのかケイルはルカに尋ねた。

 祈り姫であるサクナは治癒術を使うことが出来る。人よりその回復力は異常といっていい程早く、兄の言う通りだった。

「あぁ、いつもより僅かに熱い……」


「僅か……」

 夏だしそんな日もあるんじゃないのかと、サクナは思った。

 オデコのタオルを取りサクナは半身を起こしついでに冷たいタオルで首元を拭いた。

「……冷たくて、きもち、いい……」

 だらだらと汗をかき火照った躯にヒンヤリとした心地よさ。

「あ、サク。もう、せっかく躯を温めてるのに冷やしちゃダメだろ」

 と、ルカはタオルを取り上げてしまう。

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