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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第15章  誕生祭 ~舞踏会の華たち~ (前編)

 陛下が独裁の為に戦争を起こす気がないのは国の皆が知っている。独立国となったのは自国を護るため、攻める為ではない。

 しかし、八年間封鎖された国は他国にとって驚異の存在。古代より伝わる術者が多く住むリキマシア国、自国を護りたいのは他の国も同じことを。


「他国はともかく、コスモ国に至っては今それどころじゃないはずだ。それなのに挙式に参列したいなんてそれこそ信用ならない」

 現在、コスモ国は内乱が起こっている。
 確にそれどころではない。


 ルカはまぶたを閉じ息を吐く。
 ややあって、ゆっくりと瞳を開けた。

「コスモ国の狙いは……お前だ。領地が欲しいだけなら今は動かないだろ」

「え……でも、私の力は……」

「力じゃない。コスモ国の狙いは俺と同じ、サクの子が欲しいのだと思う」

 サクナは目を見開きルカを見据えた。
 ルカは同じという言い方をしたがその意味は違う。

 ルカは確に祈り姫のちからを持つサクナの子を望んでいる。最もそれだけではないのは普段のルカを見ればわかるが。

 ルカが望むのはヴァミンを抑えるちからであり、戦う為のものではない。 

 だが、祈り姫は何処にいてもその能力にさほど大差はない。祈りは星のためにするのだから。

 コスモ国が祈り姫を欲しいとするならば────


「…………星剣?」

「ああ、その力の意味を知っているのだろう。星剣があればいくらリキマシア国の術者でも敵わない。星を統一出来るだろう」


 
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