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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第16章 誕生祭 ~舞踏会の華たち~ (後編)

ルカは口元にクッキーを差し出す。
サクナはパクッと唇で摘み口の中に入れる。
甘すぎず、サクサクとしたなかに胡桃の甘味と程よい食感がクッキーにあっていて、旨味が口に広がる。
「あ……美味しい」
「全粒粉で作った胡桃のクッキー。妊婦さんのおやつにいいんだぞ」
「へぇ、そうなんだ」
ルカはどこか愉しそうに微笑みクッキーを摘む。
「ああ、もっと食べる?」
サクナが頷くとルカはクッキーを口元に再び持ってくる。サクナはパクッと摘んだ瞬間、背後から少し戸惑いを含んだ声がした。
「陛下……」
ルカの表情が少し変わる、楽しげな表情はそこになく言うなれば陛下の顔。
ルカはサクナに視線を戻し、食べてと、口を指す。あまりの真剣な眼差しによくわからないがサクナは高速で咀嚼しゴクッとクッキーを喉に押し込み水を少し呑み流し込む。
振り向くとそこにはスタイルがよくターコイズ色のドレスの似合う女性がいた。
歳は三十ぐらいといったところか、落ち着いた雰囲気エレガントな女性、しかしその表情は暗くサクナに視線を移し見据える。
華やかな舞踏会に似合わぬその表情にサクナもその女性に目を向けた。
「サク、こちらはナーシサス公爵夫人だ」
────ナーシサス……!?
サクナはその名に驚き目を見開き夫人を見た。

