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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第16章  誕生祭 ~舞踏会の華たち~ (後編)


 ヴィストーター、この間の事など気にもしてない様子でニコニコと相変わらずの人懐っこい笑顔で話しかけてきた。


「ご機嫌ようヴィストーター様」


 その笑顔に騙されそうになりつつ、しかし冷静にサクナは少し警戒しながら挨拶をする。

 ヴィストーターは悪気のないイタズラをするような人、それをサクナにしていいのはルカだけだ。

 この間のような悲しい想いを繰り返さないために。

「サクナ、どこ行くのですか?」

「庭を眺めに…………」

「あ、なるほど。ここの庭も綺麗ですからね、ご一緒してもよろしいですか?」


 宜しいかどうか以前にヴィストーターは相も変わらずなぜここに居るのだろう。

 それを尋ねたところでちゃんとした答えなど返っても来ないだろうとサクナはとりわけ訊きはしなかった。

 しかし、サクナはどうしたものかと考える。
 令嬢たちは、どういう意図で庭に誘ったのかはわからない。

 本当に親睦を深めようとしているのか、イマイチ信用しきれない所もある。
 ヴィストーターが居れば、令嬢たちも下手にサクナには手でしは出来ないだろう。


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