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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第16章  誕生祭 ~舞踏会の華たち~ (後編)


 サクナはルカの背中に腕を回し、肩口に顔を埋める。

 沐浴を済ませた後のせいか、ルカの甘い香りとシャボンのいい匂いがする。

「ルカ……」

「ん?」

「こうしてるとすごく幸せなことだって教えてくれる、いろいろ不安もあるけど私、ルカの傍にいると安心する」


 本当にいろんなことがあった。
 ルカと出会ったのは八年前、哀しい瞳を見せた少年が幸せになれるといいなと彼の笑顔を見て思った。

 あの時は、少年が陛下だなんて気づきもしなかった。でも、知らずにルカの手を掴んでいた。

 ────ルカ……今は、幸せ?

 陛下にはそう思わせる不思議な哀愁が見え隠れする。その表情をいつも笑顔で隠してしまうから。

 だからこそ、みんなルカに幸せになって欲しいと願うのかも知れない。


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