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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第18章 ~混迷~


 その小さく部屋に響く破裂音はケイルが見つめる方向より聞える。

 ケイルはジッと壁を見つめたまま何も応えない。


「ケイル様……何かあったのでしょうか……」

 お茶の準備をしていたユイナもその手を止めこの異常な空気に表情を曇らす。

 ケイルは、その何かをわかっているからこそ黙るしかなかった。

 サクナとジュリアンは瞬時にそれを理解した。

 その時だった────


「ケイル様、大変ですっ。ヴァミンが!」


 侍女のひとりが部屋に入るなり荒々しく叫んだ。


 それは、驚愕の出来事だった。

 何か、とは異常事態が起きた事を意味するのはわかっていたが、ヴァミンが後宮を襲う事など有り得ないことだからだ。

 
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