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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第18章 ~混迷~


「ヴァミンが……?」

 ケイルは、眉根を寄せそれを確認する。
 侍女は、切迫詰まった様子で彼女自身混乱した様子だった。

 その様子から、有り得ない事実がこの後宮内で起こっていること意味した。

「兄様」

「いや、ダメだ……」

 ケイルはサクナの言葉を遮る。

「ケイル様、お願いです。侍女たちがヴァミンに襲われてます。助けてください」

 ケイルはクッと、表情を歪めた。
 緊急事態だからこそ、ケイルはサクナの傍を離れるわけには行かない。

 そして、躊躇する理由は他にある。

 ケイルはヴァミンの気配を感じることが出来る。
 ヴァミンが現れたのなら、真っ先にその事に気づいているはずだ。

 ケイルはヴァミンの気配を感じていなかった。

 だからこそ後宮にヴァミンが現れるなど信じ難い事だった。

 しかし、侍女が嘘をついてる様子もなくそして『何か』が、この後宮内で起こっているのは事実だ。


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