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祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第1章  ~始まりの森~

「どうでもいいが、早く帰れ…………」

 兄であるケイルは呆れ気味に呟く。

「あ、兄様もありがとう」

「礼はいい。お前を護るのは当然のことだ」

 口は悪いが本当は優しい兄。
 サクナに怒るのも大事な妹だからこそ。

 ちょっとぶっきらぼうなのは信頼の証。
 


「どんな理由があってもひとりで森に入るなよ」

 宮廷に帰る中、ルカは今一度警告をする。

「…………私だって、それなりに戦えるし」

「喰われそうだった癖に」

 それを言われると何も言い返せないが…………

 サクナはシーボルディ家の血筋で術者であり、胎内に星剣を宿している。

 星剣に斬れぬものなしと伝わる、名剣である。
 
 しかし、祈り姫として戦う知識はあるものの、サクナは戦闘は苦手だった。


「お前を喰ってもいいのは俺だけだ」

「…………何言ってるのルカ様」

 ルカは足を止めサクナの頬に手を添える。

「しょうがないだろサク旨そうなんだから」


 木漏れ日がルカの淡いブロンドの髪と蒼い眼をキラキラと輝かせる。

 肩まで伸びたブロンドの髪を揺らし、そっと顔を寄せる。 間近に迫る優美で端正なルカ。

 サクナは胸をキュンと鳴らし緋色の瞳を閉じる。

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