この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
祈り姫 ~甘い香りに惹かれて~
第3章 ~偽りの気持ち~
「本当は、離れたくなんかないけどね、お前のせいでダメ陛下なんて言われたくないしな」
リキマシア国とコスモ国は今でこそ和平を結んではいるが数年前までは戦禍にあった。その、和平を結んだのがルカだった。
「…………ルカ、私も何かお返ししなきゃ」
「ん? いいよ、俺はもう貰ったから」
「…………?」
「お前と。その、いつか産まれてくる子供の為に、俺は俺を護る」
ルカの父、前陛下はコスモ軍の手により帰らぬ人となった。まだ、ルカが十歳の時だ。肩に受けた矢に毒が仕込んでありそれが致命傷となった。
母もルカが小さい頃に病気で亡くなった。
家族という、無償の愛を与えてくれる人をルカは幼くして失ってしまった。
ルカはその言葉をどんな気持ちでサクナに伝えたのか。その本当の意味はわからない。
ただ、サクナはルカの支えになりたい。
まだ、子供で自分がどれだけそんな存在となれるかなんてわからない。
「ルカ……好きだよ。大好き」
ジッと、サクナはルカを見つめる。
切ない表情を笑顔で隠してしまうルカに何かをしてあげたくなる。
ルカは素直なサクナに少し驚いたのか眼を見開きく。彼の見つめる瞳が、気持ちを伝えた気恥ずかしさもあり、少し照れくさい。
ルカは顔を寄せ口づけをしてくれた。
しっとりと重なり言葉を返すように唇を啄む。
そんな気持ちを全て包み込んでしまうような、優しく心地良いキスだった。