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重ねて高く積み上げて
第3章 たゆたう

木箱に入っているワインが顔を出した時、私の人生で全く初めての異質な高級感に当てられて、好奇心に喉が鳴った。
猫が甘える時のような音を隣で聞いた高橋さんが「興味あるだろ?」と満足そうに笑う。ビーフシチューの入っていたお皿を下がり、代わりにワイングラスが私と高橋さんの前に並ぶ。
高級レストランのウェイターよろしく、キッチンから出てきて隣に立ったユウくんが、しなやかで静かな手つきで注ぐ。一切の傷やくもりのないグラスに、赤黒い液体が音もなく溜まっていく。降り注ぐオレンジ色の照明に照らされて、妖しくも華やかな色に輝くワインは、よく手入れされた赤い薔薇のように見えた。
「試飲してないから何が合うかわからないけれど……フルーツもどうぞ」
可愛らしく飾り切りされたフルーツが小さな花束のように盛られて出てくる。オレンジやイチゴ、リンゴにメロンにマンゴーなど、季節を無視した様々な色と形のフルーツ達が、メロンの皮を皿にして、生け花のように飾られている。
明らかに2人分の量で、本来なら高橋さんが手をつけるまで待たなければならないけれど、プライベートな空間なので、それも無視して大きく咲き誇るオレンジにさっさと手をつけた。
二又に割れた皮の先が、内側に巻かれていてツルのようだ。口の中いっぱいに広がる甘酸っぱい果汁と、さわやかな香りが心地いい。
「オーナーも」
高級感溢れるボトルの胴体を鷲掴みして、高橋さんが勧める。慌てて用意されたグラスは、ユウくんの成人祝いに私があげた、縁が青く光る日本酒用のグラスだった。私があげたと言っても、親からのお小遣いを貯めて買った、正真正銘親のお金なんだけれども。
店内の明かりに照らされてキラキラ輝くそれは、今から15年前にあげた物とは思えないくらい綺麗で、まるで新品のようにも見えた。
「それ日本酒用のグラスですよね」
ワインを注ぐことを躊躇う高橋さんに、ユウくんは「これで飲むお酒が1番美味しいんです」と穏やかに笑いかける。少しもお酒を飲んでいないはずなのに、くらりときた。
新品のよう、だなんて当然だ。ユウくんは嗜む程度にしかお酒を飲まないのだから。グラスの出番なんて、15年のうち、何回あっただろう。
猫が甘える時のような音を隣で聞いた高橋さんが「興味あるだろ?」と満足そうに笑う。ビーフシチューの入っていたお皿を下がり、代わりにワイングラスが私と高橋さんの前に並ぶ。
高級レストランのウェイターよろしく、キッチンから出てきて隣に立ったユウくんが、しなやかで静かな手つきで注ぐ。一切の傷やくもりのないグラスに、赤黒い液体が音もなく溜まっていく。降り注ぐオレンジ色の照明に照らされて、妖しくも華やかな色に輝くワインは、よく手入れされた赤い薔薇のように見えた。
「試飲してないから何が合うかわからないけれど……フルーツもどうぞ」
可愛らしく飾り切りされたフルーツが小さな花束のように盛られて出てくる。オレンジやイチゴ、リンゴにメロンにマンゴーなど、季節を無視した様々な色と形のフルーツ達が、メロンの皮を皿にして、生け花のように飾られている。
明らかに2人分の量で、本来なら高橋さんが手をつけるまで待たなければならないけれど、プライベートな空間なので、それも無視して大きく咲き誇るオレンジにさっさと手をつけた。
二又に割れた皮の先が、内側に巻かれていてツルのようだ。口の中いっぱいに広がる甘酸っぱい果汁と、さわやかな香りが心地いい。
「オーナーも」
高級感溢れるボトルの胴体を鷲掴みして、高橋さんが勧める。慌てて用意されたグラスは、ユウくんの成人祝いに私があげた、縁が青く光る日本酒用のグラスだった。私があげたと言っても、親からのお小遣いを貯めて買った、正真正銘親のお金なんだけれども。
店内の明かりに照らされてキラキラ輝くそれは、今から15年前にあげた物とは思えないくらい綺麗で、まるで新品のようにも見えた。
「それ日本酒用のグラスですよね」
ワインを注ぐことを躊躇う高橋さんに、ユウくんは「これで飲むお酒が1番美味しいんです」と穏やかに笑いかける。少しもお酒を飲んでいないはずなのに、くらりときた。
新品のよう、だなんて当然だ。ユウくんは嗜む程度にしかお酒を飲まないのだから。グラスの出番なんて、15年のうち、何回あっただろう。

