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重ねて高く積み上げて
第3章 たゆたう

涙を拭う手を握られたと思った瞬間、強い力でひっぱられて、私はユウくんの腕の中にいた。
暖かい。どちらのものか分からない心臓の音がする。
「ハナちゃん、泣かないで」
泣きそうな声だった。
確か、あの時もそうだった。離れたくないって泣き始めた私を抱きしめて、同じような声で同じ言葉を言った。同学年の男の子が泣く場面は何度も見たけれど、男の人が泣きそうなところなんて、ドラマでも見たことなくて、涙が引っ込んでしまった。
今も、私はユウくんを泣かせてしまったのかと思って、あんなに拭っても止まらなかった涙が、ぴたりと止まっている。
腕の中で顔を上げると、キスが出来そうなほどに顔が近い。苦しそうに眉間に皺を寄せているけれど、目から涙は流れていない。頬を手で覆うと、かさついた肌の感触があった。
今までにないくらいの近い距離で目が合う。
「大丈夫? ユウくん」
泣いてしまいそうな顔に、ふっと笑顔が戻る。
「うん、大丈夫だよ。ハナちゃんこそ大丈夫?」
泣き笑いみたいになっているユウくんの顔を見上げていると、抱きしめてあげたくなった。片足だけベッドの縁に乗っていたところを、両足乗せて膝立ちになって、ユウくんの頭を抱きしめる。
「大丈夫。ユウくんが泣きそうだから、涙もひっこんじゃった」
「ハナちゃん」
「ん?」
「ハナちゃんが嫁に行く時、俺、泣くかも」
そう言って腰を抱きしめるユウくんが、小さな子どものようで、愛おしくて堪らなくなった。12歳も年上の男性なのに、守ってあげたいと思うことはおかしいだろうか。
堪えきれない笑いを含ませながら、童心に帰った私は言う。
「私、ユウくんと結婚したい」
小さい頃にも言ったことのない言葉は、ユウくんの中でどんな風に響いたのかわからない。けれど、私を見上げた時のユウくんは、耳まで真っ赤で、初めて充足感で満ちた。
期待した展開にはならなかったけれど、私の心は十二分に満たされていて、無防備な寝顔を晒す12歳年上男性の隣で、自然と笑みがこぼれる。アルコールが切れて、なかなか眠れない私とは違って深い眠りに入った彼の額にキスを落として、1枚の布団を分け合って眠った。
暖かい。どちらのものか分からない心臓の音がする。
「ハナちゃん、泣かないで」
泣きそうな声だった。
確か、あの時もそうだった。離れたくないって泣き始めた私を抱きしめて、同じような声で同じ言葉を言った。同学年の男の子が泣く場面は何度も見たけれど、男の人が泣きそうなところなんて、ドラマでも見たことなくて、涙が引っ込んでしまった。
今も、私はユウくんを泣かせてしまったのかと思って、あんなに拭っても止まらなかった涙が、ぴたりと止まっている。
腕の中で顔を上げると、キスが出来そうなほどに顔が近い。苦しそうに眉間に皺を寄せているけれど、目から涙は流れていない。頬を手で覆うと、かさついた肌の感触があった。
今までにないくらいの近い距離で目が合う。
「大丈夫? ユウくん」
泣いてしまいそうな顔に、ふっと笑顔が戻る。
「うん、大丈夫だよ。ハナちゃんこそ大丈夫?」
泣き笑いみたいになっているユウくんの顔を見上げていると、抱きしめてあげたくなった。片足だけベッドの縁に乗っていたところを、両足乗せて膝立ちになって、ユウくんの頭を抱きしめる。
「大丈夫。ユウくんが泣きそうだから、涙もひっこんじゃった」
「ハナちゃん」
「ん?」
「ハナちゃんが嫁に行く時、俺、泣くかも」
そう言って腰を抱きしめるユウくんが、小さな子どものようで、愛おしくて堪らなくなった。12歳も年上の男性なのに、守ってあげたいと思うことはおかしいだろうか。
堪えきれない笑いを含ませながら、童心に帰った私は言う。
「私、ユウくんと結婚したい」
小さい頃にも言ったことのない言葉は、ユウくんの中でどんな風に響いたのかわからない。けれど、私を見上げた時のユウくんは、耳まで真っ赤で、初めて充足感で満ちた。
期待した展開にはならなかったけれど、私の心は十二分に満たされていて、無防備な寝顔を晒す12歳年上男性の隣で、自然と笑みがこぼれる。アルコールが切れて、なかなか眠れない私とは違って深い眠りに入った彼の額にキスを落として、1枚の布団を分け合って眠った。

