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Snowtime 溶けて、消える
第1章 ***
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 アパートに着く頃には、僕達はすっかり体の芯まで冷え込んでしまっていた。鍵を開けるために出した手ですら、かじかんで上手く動かせない程だ。僕よりも長い時間あそこに座っていた彼女なんて凍死寸前に違いない…と思っていたら余程寒さに強いのか、時折体を震わすだけで唇も赤いまま。特に具合が悪そうな様子は見られなかった。

 やっぱり雪だるまなんじゃ…いや雪女かも…なんて思っていたら、上手く差し込めなかった鍵が手から滑り落ちる。拾おうとした瞬間、彼女の伸ばした手と触れ合い、氷そのものの様な冷たさが全身を突き抜ける。

 「あら、ごめんなさい」と控えめに恥ずかしがる彼女の裏には、想像を絶する痩せ我慢が隠れていたことにようやく気がついた瞬間、僕は何を浮かれていたんだと自分を殴りたくなる強い衝動に襲われる。もし家に入って、暖房をつけて、お湯を張って…なんて悠長なことをしていたら、この人はその間に消えてしまうのではないか。

 あの奥ゆかしい佇まいも。
 心に火を灯す、はにかむ笑顔も
 雪のような白い肌も。全部。溶けて消えて…

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