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Snowtime 溶けて、消える
第1章 ***
 互いに緩慢な手捌きでぴちりと張り付く下着を剥ぎ取ると、雪原に繁るポインセチア畑がそこにはあった。真っ白なシルクの肌に血流が通い始めたのか、赤みを帯びる斑模様が所々に浮かび上がっている。ひしと抱き締めて、その源同士を厚く深い土越しに触れさせる。死んだ様に冷たかった彼女に生命の伊吹が宿っているのを確かに感じた。

「んっ…あつい…」

「疼いているの、僕も感じます…もうちょっと。あともうちょっとですから…」

 何に対しての『あつい』なのか。あともうちょっとで何なのか。互いの発言に抱く疑問も、温もりの前では自然消滅していく。ぼんやりとする意識の中で今僕が思っていることといえば、そういえばポインセチアの花を僕は見たことがないな、という取るに足らないことだった。

 彼女の柔肌に熱が灯ると共に、積もった雪が溶けていく。赤々と色付く生命は長い冬を耐えた褒美に春を欲する。降りしきる雨にも負けず、春一番をしっとりと濡らす雪解け水が、春を乞う何よりの証だ。

「あっ…いれちゃ…ダメ…今挿れられたら…溶けちゃ、うぅん!! あ、あとごふん…」

「駄目です…御存じ、でしょう? 春は…待ってはくれないんですよ」

 熱中症を患い、限界まで硬さを増した反りが、涼を求めて崩落寸前の氷室に侵入する。あれだけ温もりをその身に受け、それでも尚しぶとく残る|薄氷《うすらい》をみちみちと割りながら進む砕氷船に、海は「んひぃいい!!」と矯声を挙げる。

 |静謐《せいひつ》な彼女からは予想だにしなかった声色に、僕は完全に虜になり、後先考えず腰を振り始める。暴力的な春暖に冬眠から叩き起こされた雄が咆哮を挙げて、深く積もる名残雪をかいては蹴散らしていく。

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