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初めての体験は、自分の意識が
第1章 ような気がしてしまうので、もうあまり抵抗できないのだった。
「あなたは人間を見る必要なくなるというわけね。本当はドクター・アンスは、あなたの姿をしたくらいで満足なんじゃない? ドクター・アンスが見た人は、あなたが生まれてからまだこの世にいないもの。でも、ドクター・アンスは言った。生まれた後にまだ生きているのはドクター・アンスだけだと」
わたしはその言葉に反応した。
「じゃあ、わたしが生きているのは、あなたのおかげってこと?」
「そうよ。それで私の顔を見たら、あなたの本当の身体で見られなくなったっていいと言われた。でも私はあなたを知りたいに決めたけど、あなたはまだ、わたしの身体の一部だもの」
わたしは言われた通りに頭を撫でた。
「あなたの声や、瞳や唇は、私の身体に戻ってこれなかった。何のために? 私たちは、もうずっと一緒だった私たちの未来が欲しいだけなのに」
彼女はそう言って、わたしの目を見た。
「あなただけは、私を見るのよ。私とあなたが一緒だったら、また未来がやって来るんじゃない」
「そうね。私とドクター・アンスは、もうずっと一緒よ」
それがドクター・アンスの口癖のようだった。
「それなら、わたしもドクター・アンスの声が聞きたーい!」
わたしは嬉しさのあまり飛びついた。
ドクター・アンスはくすぐったそうに笑って、ちょっとだけ不満げにわたしを見上げた。
「あなた、本当に小さな子だけど、あなたは私の子供みたいなもんよね」
それから少し寂しそうな表情を浮かべた。それはどこかで、いつも見ていた顔だと気づく。
「ねえ!わたしの名前はあるの?」
「あなたには、名前がないわ。だからみんな、わたしのことをドクターと呼んでいた。でもドクターなんて呼ばない方がいいわね。だってあなたたちは一緒に暮らすことになるんですもの」
「わたしたち、どこで暮らすの?」
ドクター・アンスはクスリとした笑い声を上げた後、そっと目を閉じながら答えた。
〈わたしたちの住むところへ〉 2章 わたしは目が覚めた時、自分が地球ではなく月の上で眠っていることを知った。その日はとてもよく晴れていたけれど、風はなく雲もなくてとても綺麗だった。
周りには何もなく、ただ青い空が広がるだけだったけれど、それでも不思議と見渡す限り全てがわたしのものになっていった。そんな中、突然、わたしは目の前が真っ白になった。
「えっ」
驚いて声が出た。
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