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初めての体験は、自分の意識が
第1章 ような気がしてしまうので、もうあまり抵抗できないのだった。

その手のひらに、びっくりしたような丸いものが出てきた。
「これ――」
わたしはそれに気づいて手に取った。
「これって、なんなの?」
「うんとね、ドクター。ドクターっていって、ドクター・アンスが言っていたことを話したい人。あたしもついているんだ」
「そうだったんだ。……そういえば、あのあと、わたしの目の前に居るわたしの娘って誰?」
ドクター・アンスはそんなわたしに、不思議そうな顔をして聞いた。
「えっと、わたしと、ドクターが、あのあと話した、夢から覚めたら一緒にいた女の人……」
わたしは夢を思い出しながらそう言った。
「そうなんだ」
ドクター・アンスは残念そうに言った。
「あのさ、僕の夢ってなんだったの?」
「えっと、私と一緒に、大きなお城で、王様と王子が待つ結婚式を見せてもらうこと」
少しだけ、ドクター・アンスが残念そうな表情を浮かべた。
「あれって、なんだったんだろう……」
「夢だから、何もわからないの」
わたしは言った。
「わたしも、なんだったのかはわからない。夢だからわかんないんだ。夢だから、何もわからない」
そう言った後、わたしは自分の心のどこかにぽっかり穴が開いてしまったような感覚を覚えた。
夢の入り口に手を差し出すと、そこはあたたやかな空気に包まれていて、それを感じるとそれと同時に、手が触れただけだと錯覚してしまうほど、とてもとても安心できる場所だった。
夢から覚めた、というのは、おそらくこれで、夢から覚めたのと同じような事を、わたしも思い出すということだろう。
わたしとドクター・アンスは、これから一緒に暮らしていけるのではないかと言われるまで、自分が何者なのか、そして何者であるのか、気づいていなかった。本当のところは、自分の記憶と夢を結びつけるために、記憶だけを持ちこんできてしまい、それが自分の事で、その記憶がまったく、どこかどうでもよくなってしまったようだった。そこにはきっと、ドクターや医師の言葉に反する自分自身というものが、確かに存在してしまっていたのだろう。そういった現実的なお話を目の前にするたび、わたしはわたしのままを見せられなくなった。いつの間にか、わたしの心を壊してしまったような感じがした。でも、それは誰かにぶつけるような、優しさを向けてはいけない気がしていて、結局その優しさも、夢の中で目の前にある彼らに向けていたようだった。
「これ――」
わたしはそれに気づいて手に取った。
「これって、なんなの?」
「うんとね、ドクター。ドクターっていって、ドクター・アンスが言っていたことを話したい人。あたしもついているんだ」
「そうだったんだ。……そういえば、あのあと、わたしの目の前に居るわたしの娘って誰?」
ドクター・アンスはそんなわたしに、不思議そうな顔をして聞いた。
「えっと、わたしと、ドクターが、あのあと話した、夢から覚めたら一緒にいた女の人……」
わたしは夢を思い出しながらそう言った。
「そうなんだ」
ドクター・アンスは残念そうに言った。
「あのさ、僕の夢ってなんだったの?」
「えっと、私と一緒に、大きなお城で、王様と王子が待つ結婚式を見せてもらうこと」
少しだけ、ドクター・アンスが残念そうな表情を浮かべた。
「あれって、なんだったんだろう……」
「夢だから、何もわからないの」
わたしは言った。
「わたしも、なんだったのかはわからない。夢だからわかんないんだ。夢だから、何もわからない」
そう言った後、わたしは自分の心のどこかにぽっかり穴が開いてしまったような感覚を覚えた。
夢の入り口に手を差し出すと、そこはあたたやかな空気に包まれていて、それを感じるとそれと同時に、手が触れただけだと錯覚してしまうほど、とてもとても安心できる場所だった。
夢から覚めた、というのは、おそらくこれで、夢から覚めたのと同じような事を、わたしも思い出すということだろう。
わたしとドクター・アンスは、これから一緒に暮らしていけるのではないかと言われるまで、自分が何者なのか、そして何者であるのか、気づいていなかった。本当のところは、自分の記憶と夢を結びつけるために、記憶だけを持ちこんできてしまい、それが自分の事で、その記憶がまったく、どこかどうでもよくなってしまったようだった。そこにはきっと、ドクターや医師の言葉に反する自分自身というものが、確かに存在してしまっていたのだろう。そういった現実的なお話を目の前にするたび、わたしはわたしのままを見せられなくなった。いつの間にか、わたしの心を壊してしまったような感じがした。でも、それは誰かにぶつけるような、優しさを向けてはいけない気がしていて、結局その優しさも、夢の中で目の前にある彼らに向けていたようだった。

