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初めての体験は、自分の意識が
第1章 ような気がしてしまうので、もうあまり抵抗できないのだった。
わたしは夢の中で、いつも彼らにぶつかってしまった。それで、夢の中にいた頃には何も感じられなくなったし、それ以前に自分の声も何も聞こえなかった。それでわたしは、夢の中で壁のようなものに当たったりはしたけれど、それは本当の自分が夢の中にいることを、体で感じるためのものではなかったような気がしてしまうので、もうあまり抵抗できないのだった。
ドクター・アンスとは、夢の中で出会ったから、それで話をする時だけじゃなくて、会う時には必ずここに来てようと心に決めていたのだけれど、それはわたしの体で彼を感じることが出来るようになったからであることは、はっきりと意識しないとわからない。でも、ドクター・アンスは、そんなわたしと向かい合うようにして立つと、少し体を屈ませているのだった。
そこで、初めて気づく。いつの間にか、「彼」は、自分でも気づかぬほど、あたたかい目になっていたのだと。そして、いつしか夢の中でわたしが見た彼の顔は、いつの間にか、あの優しい彼に見えるような、綺麗な顔付きになっていることだった。
それは、夢から覚め
始めた頃のような、不思議なものだった。
わたしはその事に対して質問しようとしたけれど、それよりも前にドクターの方を向いてしまった彼は言った。
〈君は、君の人生を生きなさい〉 その声があまりに綺麗に聞こえたからだろうか、言葉の意味がよくわからなかったけれど、なぜかその瞬間に、彼がとても綺麗なものになってしまったようで、わたしは何も言わずに俯いてしまった。
「わたしが、どんな風に生きるの?」とわたしが聞くよりも先に、ドクターの方がまた話し始めていた。
わたしはそれを聞こうと少し背伸びをした。
〈君が君である事は間違いないことだ。でも今はただ、その事に気づいていてほしい。もし気づいたなら、もう一度夢を見るのかもしれないね。その時こそ本当に、その事を理解できるんだ。僕もまだ理解しきれていないからさ〉 ドクターの言葉を聞いていると、わたしの心には、小さな穴から少しずつ風が入ってくるように思えた。それは決して心地の悪いものではなくて、むしろ何かとても素敵なものが入っているかのように感じられるもので、心の穴に入ってきたその冷たい風は、まるで暖炉の中の火の揺らめきみたいにも見えてしまう。
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