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第1章 港の見える丘

「美紀ぃ・・・・ひかるが苛めるのぉ・・・。」

舞に腕を取られた美紀はいつもの会話に、何時もの表情を見せる。

「ふふふっ・・・・。」

おだやかな笑顔はメガネ越しにも美しく見える。

学園一の秀才で育ちも良く、いわゆるお嬢様であった。

無口だが優しい眼差しが、ひかるとは好対照で舞は何でも相談出来た。

「ひかるったら、何時も私を子供扱いするんだからぁ・・・。」

ひかるは身体をぶつけるように舞の腕を取った。

「ごめん、ごめん・・・だって舞、可愛いんだもん・・・。」

舞を挟む二人は愛おしそうに視線を投げている。

妹のような舞が二人共、大好きだったのである。

舞達三人は名門女子高の一年生である。

試験休みを利用して白石先生の実家に遊びに来たのだった。

丁度、響子の両親も旅行に出かけているので気楽に四人でミニ合宿をしようという訳だ。

まだ到着したばかりで遅目の昼食を取った後、付近を散歩している所だった。

日本海を望む街はリゾートタウンとしても有名で、豪華な別荘が幾つも点在していた。

「せんせいぃー・・・・。」

舞が高い声で叫ぶと、白石響子は眩しそうに振り返った。

三人が笑顔で手を振っている。

響子の最もお気に入りの生徒達である。

制服に身を包んだ姿はさながら天使のように見えた。

実際、まだ15歳の少女達は素直な優等生であった。

ひかるは多少ませた所はあったが、成績も良く自分の意見をしっかりもっている。

美紀は学園一の秀才だし、とりわけ舞は少女らしい愛くるしさを何時も投げてくれる。

「フフフフッ・・・・・。」
「アハハハハハッ・・・・。」

楽しそうな笑い声が響いていく。

四人は手を取り合って再び歩きだした。

口ずさむ歌声が目前に広がる美しい自然と共に、心地良いハーモニーを描いていた。