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契約的束縛・過ぎ来し方(すぎこしかた)のメモリー
第4章 メモリー本郷

「吊るぞ」
「……はい」
「…………」

声を掛けた途端に女の表情が変化、苦悶から喜びなのだろうか先生に向かって妖艶に笑った気がする。それを受け先生は女の片足首を縛り、あの鉄パイプに縄を回せば女の足が海老反りのように上がっていく。

「あ あ 」
「付いている足でバランスを取れ。……そう、先ずはこのまま」
「先生、私……」
「次にいくのはまだ早い、分かるな?」
「はい……耐えます」
「それでいい」
(耐える……か……)

女の状況からしてかなり辛く苦しいはず……だというのに女は耐え少々荒い息をしているだけ。

(耐えるが命令になるのかこれは?)

この頃の俺はSMというプレイがあると理解はしていても内容的には完全な素人、命令ましてや主従関係などは知らず、先生がああ言ったので女は耐えているその程度の認識力。それでも縛られている女を見て綺麗だと思った。
華美に着飾っている女が苦手な俺が、派手な香水が嫌いな俺が、この浴衣に縄を打たれている女には抵抗感がない。それどころか不思議なほどに惹かれている、それは女なのか浴衣なのか縄なのかは謎だが確かに今までにはないなにかを感じたんだ。
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