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艶めくときは
第2章 あなた
「あゝ気持ちがいいね!」

五月の陽ざしは優しくて、
木漏れ日に誘われ
私はあなたの肩に頭を預け、
瞼を閉じて風の紡ぐ
音色を聞いている。
ゆったり流れる時間の中で、
あなたは呟く。
「幸せだな、俺達」
あなたそう言って私を膝に乗せ
静かに唇を重ねあった。
「重たいでしょ?」
と聞くと、

「ちっとも」
と言ってあなたは笑ってくれた。

そしてン十年?後

同じ季節、同じ場所で、
あなたとわたし。
「あぁ、やっぱりこの季節好きだなぁ。ねぇねぇ覚えてる?随分前にここで同じ事話したの…」
返事がない。
横顔を覗き込む
「ねぇ寝てるの?寝てますね…」
何だかつまらないと
膝を抱えるわたし。
と、あなたは突然、
「知らん、お前とは来てない」
と呟く。
わたしは顔上げ一瞬言葉に詰りながらも
「嘘!わたしと来たでしよ!」
言いながらあなたを睨むわたしに構わず、真顔で
「俺は凄く華奢で可愛い子と来たんだ」
と軽く言い放ち
立ち上がる
見上げるわたしに
手を差し伸べる。
わたしはその手に捕まり立ち上がろうとしたら、
あなたはわざとよろけて見せた。 思わずやられた!と
小さな声で叫ぶわたしは
思いっきりしがみつく。

あなたはしっかり抱き止めて
そして耳元で囁く。
「いつ帰ってくるの?あの可愛い子は」
「俺はずっと待っているんだけどなぁ」
わたしは何だか嬉しいような、
悔しいような気持ちが
入り混じり、
思わずごめんと謝り
あなたを見上げる
「食い過ぎなんだよ」
と言って頭をポンと叩いて
笑ってくれた。

いつも優しい風のように
わたしを包み、
少しの切なさをくれるあなたが
大好きでした

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