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ムッツリ最高
第12章 彼の劣情


 私が不安になってホテルのロビーの真ん中で立ち尽くすと、ホテルの出口のドアの前で、片手をズボンに入れたまま、彼も立ち止まって私を振り返り、小さく言う。



おいで。




 声は聞こえなかったけど、口の動きで、そう言っているのがわかって、私は彼に駆け寄る。

 私がついてきたのを確認すると、やっぱり彼は、私を見ようともせず、手も繋がず、どんどんホテルの外に出て、裏道に入っていく。




 彼の長い足のストライドについていくのに、私はかなり急ぎ足になり、不安が募る。

 5分ほど歩いたところで彼が止まったのは、ラブホテルの前だった。




 そして、また無言でタッチパネルを押し、部屋を素早く決めて、エレベーターに乗り込む。
 私が少し、逡巡する様にエレベーターの前で立ち止まると、彼がグッと腕を掴んで私を中に入れて、ドアを閉めた。

 先週の、優しい手の繋ぎ方とは違って、彼に掴まれた腕は痛いくらいだった。




 エレベーターを降り、表示が点滅している部屋に入る。

 部屋に入って電気がつくと、そこは、淫靡な赤に埋め尽くされた部屋だった。




 ベッドシーツも、間接照明も赤く、それがクリーム色の壁に映って、部屋全体が赤く浮かんでいるようだ。


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