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ムッツリ最高
第12章 彼の劣情


「あー!すんません!またぶつかっちゃったよー。お姉さん、こぼれた??」



 見ていた店員が慌てておしぼりをくれる。


 私はブラウスにしみを作りたくなくて、慌ててもらったおしぼりで口元から喉、そして冷たいビールの感触のあった胸の谷間を拭う。

 その時、ぶつかってきた男が、私の胸の谷間を凝視しているのに気づいた。



(あっ・・・。)



 前がファスナーのブラウスを、私は胸を拭くのに少し引っ張り、まるで男に胸の谷間を見せつけるように、そこを拭ってしまったのだ。
さっきまでの妄想で張り始めている乳房は、キャミソールからもその感触がわかりそうなほどに谷間を作って盛り上がっている。



「お姉さん、一人で、飲んでるんですか・・?」



 男が、酔った目をぎらつかせながら、カウンターに肘をかけて、私に近づいてきた時だった。



 コロンの匂いがして、肩を抱かれ、振り向くと、隆さんが立っていた。



待たせたね、行こうか。



 酔った男が、怯んだようにカウンターの肘を離し、自席に戻っていく。

 隆さんを見ると、私の方は見ないで、遠くをみていた。



怒ってる・・・?


昨日の、今日だから、怒って呆れたのかもしれない・・・。




 私が不安で彼を見つめると、一瞬、彼は私を目をすがめるように見て、また言った。



行くよ。



あ、はい・・・。



 私が慌てて椅子から降り、バッグを取っている間に、彼は大股でスタスタとレジに向かい、会計を済ませている。



あ、会計・・・。

 私が慌てて追いついた時には、レジにカードを出して、手だけで、私がお財布を開けようとするのを制した。



あ、ごめんなさい。おご馳走様です・・・。



 私がそう言っても、何も言わず、お店を出て、ホテルの出口の方にスタスタと向かう。



(え?帰るの??)



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