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ムッツリ最高〜隆の想い〜
第6章 軛(くびき)
僕自身は、確かに、その頃までに、抱いた女はクミだけだったけれど、官能やエロスについては、興味があったし、知識は豊富だった。
そんなエロスを、分かち合いたいと思っていた。
でも、クミには、無理だった。彼女は、ただ自分の承認欲求のために自分を与える、それを喜んで抱けばいい、というような女だった。
大学3年の終わりには、僕の気持ちは冷めていた。逆にクミは、僕が彼女の身体で喜ばなくなると、僕に他に女ができたのかと罵り、部屋を荒らすように何かを探そうとしたり、夜中に突然訪ねてきて、他の女の影を探すようになった。
そして、4年になる頃、彼女はとうとう錯乱したような状態になって、雨の中、裸足で僕のアパートの周りをうろついているところを警察に保護された。
僕は、彼女の親や親戚に呼び出され、激しく叱責された。
娘をこんなにして・・・
でも、僕は知っていた。クミがおかしくなっていたのは、その家族のせいだと。
クミは、その家族に愛されたくて、小さな頃から虚勢を張って生きてきたのだ。
金と権力が好きな父親、後妻と、その二人に生まれた弟。
クミは、父に褒められたくて、国家公務員試験を受けて官僚になると言っていた。でも、彼女には無理だった。虚勢を張っても、結局、最後までは踏ん張れない、甘やかされたお嬢様だった。
そのアンバランスさが、彼女を壊したのだ。
でも、彼女や、彼女の家族に言わせれば、僕が彼女を弄び、こんなふうにしたのだ、ということだった。
僕は、そんな周囲に急き立てられるように、大学卒業してすぐに、クミと結婚した。
なぜ、あの時、ちゃんと拒まなかったのだろう・・・。
確かに、あの時、父は末期癌で、もう長くはないと言われていた。母もおらず、もうすぐ父もなくす僕は、無気力になっていたのかもしれない。
そして、僕は、あの時抜け出せなかった軛に、まだ繋がれているのだ・・・。
それにしても・・・再来週から、3週間か。
僕は、鈴音のことを想う。
一昨日、初めて二人で過ごした夜・・・。
思い出すだけで、僕は幸せな気持ちに包まれる。