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マッスルとマシュマロ
第10章 夫の秘密



 華は家に帰り、夕食の支度をする。

 明日からまた長野に出張に出てしまう夫のために、夫の好きな鷄の照煮をメインに、副菜を二つほど作り、味噌汁も具沢山にする。



 ジムの帰り、股間の痛みが怖くて、バスで座って帰ってきたので、帰りが30分ほど遅くなり、少し慌てながらだったが、夫の帰る8時にはなんとか間に合った。


 息子は今日は予備校の講習の日なので、帰りは9時過ぎだ。



「ただいま。」


 夫の正弘が、いつものように8時前に帰ってくる。

 いつも、オーダメイドの三揃えの上品なスーツを着る正弘。
 華はその姿を毎日のように見惚れる。

 サラッとした豊かなグレイヘアがとてもダンディだ。



「お土産だよ。北海道の方からいただいたんだ。」


 それは有名店の季節限定のシュークリームで、箱の外までメロンの匂いがしていた。



「ありがとう・・・」


 いつも、地方の限定スイーツを見ると、もっと喜ぶ妻が、少し躊躇った。

ダイエットのために、ジムに行くと言っていたな・・・。


「ダイエットなんてしなくていいよ。健康のためには、運動するのはいいけど、僕には、スイーツを美味しそうに食べる華を見るのも楽しみなんだから。」


 そう言って、華の頭を、ぽんぽん、と撫でた。


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