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マッスルとマシュマロ
第18章 幼い記憶


 玄関先まで琴美についていくと、靴を履き、宏樹に深々と頭を下げる。



「今日まで、本当にありがとうございました。」




 その去っていく背中に、宏樹は縋りつきたかった。




行かないで・・・あなたがいなくなると、僕は誰にも甘えられなくなる・・・。



泣いて縋って止めたかった・・・。




 朦朧とした腕の中をすり抜けようとする華の身体が琴美と重なり、宏樹は泣きながらそれを止める。




「行かないで・・・僕をひとりにしないで・・・」



 華は、その縋る言葉と、宏樹の身体の熱に、また、その腕の中に身を横たえる。



「花村さん・・・僕を置いていかないで・・・」



 宏樹はうなされるように言って、その腕に戻ってきた華の身体をまたぴったりと抱きしめる。


花村さん・・・?

誰かを思い出しているのか、それとも、私の名前を混同しているのか・・・。




 ただ、震えるように静かに泣いている背後の宏樹の気配に、華はじっとして宏樹の縋るような抱擁を受け止めていた。





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