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マッスルとマシュマロ
第22章 邂逅
正弘は長野にあるラボに来るのが好きだった。
新薬でこの20年で急成長してきた会社だったので、研究員たちの頑張りが何より大切だ。
そして、自分も研究者だったこともあり、試薬に囲まれた研究室の匂いや雰囲気が落ち着いた。
起業してから、経営のことを考えることが増えたけれど、研究という足元を必ず押さえておきたくて、月に半分はこのラボに来る。
とりあえずラボに入ると、研究員たちの今の課題の進捗を見て回り、次の日には、研究室長と、治験のデータや今後の方針をやりとりしていく。
今回は、水曜日から金曜日までの予定だったので、正弘は水曜日はラボに篭り、木曜日は室長との協議や新設するラボの打ち合わせをすることになっていた。
自分でも、経営の煩雑さを離れ、研究室にいる解放感で楽しく過ごしていたかったが、ラボに入るとすぐに秘書から電話があり、ここに取引先の医療法人の会長が訪ねてくるから、と言われた。
大事な時間をとられるようで、正弘は少しがっかりしたけれど、これも社長業の務めだと気持ちを引き締め、15時から、その社長のために時間を空けた。