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マッスルとマシュマロ
第23章 初恋の人
「じゃあ、俺たちは旧交を温めるから。高田はホテルに帰ってていいぞ。」
地元の食材を使ったイタリアンの店で会食を終え、呼んでいたタクシーに乗り込みながら、竜馬が美久にいう。室長もそこで深々と頭を下げている。
正弘も美久に頭を下げてから、竜馬の隣に乗り込む。
「メイプルコテージの307まで。」
会食の途中で、正弘がこのラボのある高原にコテージを持っていると聞いた竜馬が、二次会はそこで、と言い張ったのだ。
タクシーが室長と美久に見送られながら、街灯の少ない道に入ると、静かな声で竜馬が聞く。
「何年ぶりだ?」
「40年ぶり、ですかね・・・。」
「そんなになるのか・・・まいったな。俺もすっかりこんなだし。でも、お前はあんまり変らないな。」
竜馬の目に見つめられて、正弘はドギマギとしながら、前を見る。
自分の鼓動をあえて認識したくなくて、運転手に言う。
「その先を右です。」
すると、運転手は「存じております。」と丁寧に答える。