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マッスルとマシュマロ
第24章 優越感
"すこし、話がしたいので、電話をしてもいいですか。"
宏樹からメールがもう一通届き、華は是非、話してみたい、と思った。
声も、夫に、似ているだろうか?
これまで聞いていた声を思い出しながら、でも、これまではそんなこと思いもよらなかった。もう一度、耳元でその声を聞いて、夫との繋がりを確かめたい・・・。
華はメールに自分の番号を返信した。
すぐに電話がかかってくる。
「もしもし」
「はい・・・」
宏樹は、何を言えばいいのか、躊躇う。華は宏樹の声をもっと聞きたかった。
「大丈夫なの・・・?」
「ずいぶんスッキリしたから・・・多分、今晩、ゆっくり寝れば・・・大丈夫。」
ああ、やっぱり、声も夫に似ているわ・・・。
華は痺れるような思いで宏樹の声を聞く。
この声を、あの、夫に似た頭の形や耳の形を、もう一度、自分の目や耳や、そして肌で感じたい・・・。
華の中で、夫への長年持ち続けた想いが、宏樹にすり替わる。
その時、宏樹が、また、あの縋るような声で華に告げる。
「ねぇ、もう・・・会いないなんてことは、ないよね?また、僕のトレーニングに、来てくれるよね・・・?」
ああ、私を求めてくれる・・・。
華は、また、夫と宏樹を倒錯するように、心を震わせ、ゆったりと答える。
「ええ、行くわ・・・。」
「よかった・・・。」
ホッとした声を出す宏樹に、華はまた、胸の中で優越感に浸る。
夫の血を引くこの人が、私に縋ってくれる・・・。
それは、痺れるような優越感だった。