この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
マッスルとマシュマロ
第26章 違う日常
正弘の、その淡白さ、宏樹の母とも何の感情も交えないやりとりに、華はほっとし、自分には見せてくれている優しさに、優越感を持ったのだ。
そして、その上、自分は、その息子に、縋られるように、求められている・・・。
あの次の日から、体調を伝えてくる宏樹のメールが毎日届いた。華は、それに応えながら、何ともないような、その日したこと、趣味の話などを交わした。
でも、その折々に、宏樹は、"一緒に食べたかった"とか、"今度、一緒に行ってみたい"など、甘えたような文面を送ってくれた。
それが、華の心をくすぐり、なんだか大きな気持ちにしていたのだ。
そんな、何かに優越した気持ちで、いそいそと、おやきを温めて、お茶を用意する。
おやきが温まったところで、ちょうど正弘が降りてきた。
すると、息子も降りてくる。
「なんだよー、めっちゃいい匂いじゃん。」
バタバタと降りてくる息子に、華は箱を差し出しながら、言う。
「お父さんのお土産よ。弘くんも食べるなら温めるから、どれか選んで?」
「うわー、なんか、旨そうなヤツばっか。じゃあ、これと、これと、これかなー」
欲張るように三つも選ぶ息子に、華も正弘も笑う。
温かい、家族の時間。でも、正弘の頭にも、華の頭にも、家族でない人の面影が浮かんでいる。
いつもとは、違う、日常がそこにあった。