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マッスルとマシュマロ
第26章 違う日常



 正弘の、その淡白さ、宏樹の母とも何の感情も交えないやりとりに、華はほっとし、自分には見せてくれている優しさに、優越感を持ったのだ。




そして、その上、自分は、その息子に、縋られるように、求められている・・・。



 あの次の日から、体調を伝えてくる宏樹のメールが毎日届いた。華は、それに応えながら、何ともないような、その日したこと、趣味の話などを交わした。


 でも、その折々に、宏樹は、"一緒に食べたかった"とか、"今度、一緒に行ってみたい"など、甘えたような文面を送ってくれた。

 それが、華の心をくすぐり、なんだか大きな気持ちにしていたのだ。


 そんな、何かに優越した気持ちで、いそいそと、おやきを温めて、お茶を用意する。



 おやきが温まったところで、ちょうど正弘が降りてきた。
すると、息子も降りてくる。



「なんだよー、めっちゃいい匂いじゃん。」



 バタバタと降りてくる息子に、華は箱を差し出しながら、言う。



「お父さんのお土産よ。弘くんも食べるなら温めるから、どれか選んで?」


「うわー、なんか、旨そうなヤツばっか。じゃあ、これと、これと、これかなー」



 欲張るように三つも選ぶ息子に、華も正弘も笑う。



 温かい、家族の時間。でも、正弘の頭にも、華の頭にも、家族でない人の面影が浮かんでいる。




 いつもとは、違う、日常がそこにあった。



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