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マッスルとマシュマロ
第3章 鍛える女



「ねえ、林田さん・・・」


 ドアを閉めるなり宏樹に擦り寄ってきたのは三田和代だった。


 2ヶ月前からジムで宏樹を指名している45歳の女だった。


 数件のエステイックサロンを経営しており、株でも儲けているとの噂だった。



 更衣室に宏樹の手を引いて入る。

 個人レッスン中心のこのジムは、昼間のマンツーマンの予約を入れるとインストラクターと客の二人きりだ。

 そして更衣室側のスペースには監視カメラもない。



 そもそもこのジムは、不動産会社を手広く経営しているオーナーが、自分のためにトレーニングスペースが欲しくなり、経費で最新の機材を買えるからと作ったものだ。

 オーナーと知り合いの若い男女が10人ほどトレーナーをしていて、それぞれが顧客を持っており、顧客数に応じた歩合制の給料をもらっている。


 いわば貸しスペースのような運用をしているため、個別レッスンの時には、トレーナーと客の二人きりの密室になる。



 和代はいつも一時間のコースで2週間に1回の予約を朝10時から入れる。

 宏樹は満員電車に乗って8時にここにつき、自分のワークアウトを一時間みっちりこなして、さっきシャワーを浴びたところだ。



 和代は更衣室の鍵を閉めた。


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