この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
マッスルとマシュマロ
第44章 嫉妬
竜馬は正弘を後ろから抱きしめたまま、これまでの自分のことを話し、正弘のこれまでのことを聞いていた。
竜馬のこれまでは、あまりに壮絶だった。
新婚旅行に愛人を連れてきた妻。
妻の寝室に出入りする男達・・・。隣の部屋から聞こえる嬌声・・・。
憎々しげに言う竜馬の言葉からは、女という生き物全てが欲深く邪だと軽蔑している声音が響いていた。
「それで、お前は、幸せな結婚生活だったのか・・・?」
少し揶揄うような竜馬の言葉だった。竜馬は、結婚が幸せだなんて、少しも思えないのだった。まして、欲深く邪な女を、正弘が愛おしむとは思えなかった。
竜馬がそう思っているのだろう、と正弘も思いつつ、それにどう答えるか、躊躇った。だが、嘘をつくのも違うだろうと、正弘は正直に答える。
「幸せ・・・だと思うよ・・・」
後ろから、正弘の胸を撫で回していた竜馬の手が止まる。
竜馬の身体が温度を失っていくように感じ、正弘は慌てて竜馬に向き直って、その胸に顔を埋めながら囁く。
「でも・・・妻を抱いたことは・・・ほとんどないよ・・・気持ちよくなんてなれないんだ・・・。彼女は、僕にとって、可愛い大きな白い犬のようなものだよ・・・。ただ、家族として・・・そういう意味の幸せだよ・・・。」
竜馬は、ふっ、と軽く息をつき、正弘を抱きしめて足を絡め、その頭に自分の顎を乗せ、ピッタリと身体を沿わせた。
「じゃあ、これまで、お前の欲しがりな身体は、どうしてたんだ・・・?」
正弘は胸の奥が熱くなる。
僕 の、欲しがりで、こんなにいやらしい身体を知って、受け入れてくれるのは、竜馬さんだけだ・・・。
これまで、正弘は、自分の性に悩みながら、でも、会社の代表として、夫として、父親として、正しく見せようと生きてきた。
でも、その内側にある、快感を求める欲望を、竜馬は包み隠さずに見せられるただ一人の相手だった。
とはいえ、これまで、正弘はその肉体を埋めてくれる情夫を持たなか ったわけではなかった。
言い淀んだ正弘を、竜馬が促す。
「だれか、男が、いたのか?」