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マッスルとマシュマロ
第48章 混沌
華は、吸い寄せられるように正弘に近づき、その首に腕を巻きつけ、自分から口付けした。さっきまで宏樹と交わしていたあの、いやらしいキスを当たり前のように正弘の唇に求めて、舌を出し、その口内に入れ込もうとした。
その時、正弘は思わず華を押し除けた。
正弘には、耐えられなかった。その柔らかさが、自分の胸に押し当てられる華の乳房も、唇に触れてくる柔らかな舌も、正弘の体に拒絶しか生まなかった。
思わず、手の甲で、華の舌が舐めた唇を強く拭うことまでした。
「もう・・・行くから・・・行ってきます・・・」
華の目を見ることもせず、正弘はクローゼットから出て行った。
華は、混沌の中にいた。
華の中に、あの夏の始まりの日、バスから見た、夫とスラリとした女性の姿を思い出していた。
でも、このクローゼットの横にある寝室で、抱き合った感触を思い出していた。
その感触の合間に、夫に入れてもらえない疼きを抱えた夜の感触も混ざって行く。
そして、最後に、先ほど正弘が見せた拒絶・・・。
華は、自分の足元の地面がなくなるような感触を覚える。一瞬、眩暈がして座り込んだあと、ふらふらと立ち上がり、正弘を追いかけた。