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マッスルとマシュマロ
第4章 バスの向こう
華は、帰りはバスで帰ることにした。
ギャラリーは、夕方4時までで美大生のバイトと交代できるので、さほど込んだ時間ではない電車に乗れるのだが、今朝のことがあり、電車に乗るのが気後れしたのだ。
怖い、という気持ちの中に、自分が痴漢を期待していることと、あれほど感じてしまったらどうしよう、ということも含まれていて、そんな気持ちから逃げるようにバスにした。
バスだと、家まで電車より30分、時間が長くかかるが、ざわざわした気持ちを落ち着けるのにちょうどいい、と乗り込んだ。
バスは、まだ夕方の空いている状態で、華は入り口近くの席に座れた。
窓の外を眺めながら、こうして帰るのも悪くないな。
華は繁華街の様子を見ながらぼんやりと乗っている。
5時近く繁華街は、これから街に出かけようとする人でだんだん華やぎ始める時間だ。
華は、夫とそんな街に繰り出す妄想をしてみる。
実際は、そんなことは、子供が生まれてからはなかった。
夫は仕事が忙しく、毎日帰宅は夜8時頃だし、朝も6時半には出て行く。
月の半分は、研究所のある長野に出張だったし、その分、土日は家でゆっくりしたいのか、出かけたりもしない。
ただ、華の誕生日と、結婚記念日の近くの土日には、シティホテルのスイートを予約して、美味しい食事をご馳走してくれる。
その時も、息子も一緒なので、ロマンティックなものではないが。