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マッスルとマシュマロ
第7章 欲張りな元カノ
「今月からはウエスト周りをもっと締めたいの。今度の秋、夫人の会の総会でみんなでドレスで集合なのよね。」
井上美咲は、総合病院を経営する一族の、いわゆる若奥様だ。
院長が義父で、夫は副院長。
自分は5歳の子どもを持ちながら、子どもは家政婦に預け、ジムだ英会話だと飛び回っている。
最近は、経営者夫人美人妻の会とかいう空々しい団体に入って、嬉々として活動している。
「ドレスはね、会のメンバーの方のご紹介で、オートクチュールで頼むことになったのよ。その採寸会が来月にあるから、ウエストを締めときたいの。」
宏樹は、内心呆れている。
経営者夫人同士で交流して、夫の事業を支えるための人脈作りのサロン、というのが表向きらしい。
しかし美咲の話を聞いていると、高級化粧品のステマをやらされたり、こんなふうにお高い商品を買わされたりしていて、宏樹には、裏に何某かの儲けを吸っている奴がいそうな気がする。
最近のこういうサロン活動、というのは、年配者が巻き込まれるネットワーク商法と何ら変わりない。
まあ、美人妻とチヤホヤされて嬉しいなら、それもいい。
宏樹は美咲の私生活には関心がないので何も言わない。
「じゃあ、外腹斜筋のトレーニング強めに入れようか。」
実はこの美咲は、宏樹が大学に入って2年ほど付き合っていた女だった。いわゆる元カノ、というやつだ。