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第4章 小６冬

　「はて？酷いことのう。」
　「惚けないで！私見たんだから！」
　脅迫に決定かの？
　「ほう、いつ、どこで、何を見たのかの？」
　声の温度が変わらぬ様に注意しながら問う。
　「そ、それは・・・」
　「それは、なんじゃ？」
　言い澱み俯く奏美の顔を中腰になって下から見上げる。
　熟れすぎたトマトみたいに真紅に染まった頬。
　指でつつけば皮が破れて血が噴き出すのではなかろうか？
　間近から真っ直ぐ瞳を見据える。
　伊達に長年修羅場を潜ってきたわけでない。
　怒気と殺気の絡まった視線に奏美の膝頭が震え出す。
　仔猫の分際で獅子に噛みつこうしたのだ。
　相応のお仕置きは受けて貰おう。
　「授業でやったろ？5W1Hじゃ。先ずは、いつ？」
　口調は優しく、じゃが有無を言わせぬ圧力を込める。
　「ほ、放課後」
　「その調子じゃ。何処で？」
　「と、図書室で。」
　「誰が？」
　「好実先生が」
　「どうした？」
　「烏丸君にえ、Hな事してた。」
　やれやれ。
　気を付けていたのじゃが見られておったようじゃな。
　まあ、お腹に赤ちゃんがっと言っとったから見られたのはフェラチオまでかの？
　「Hな事の？具体的には何をしとった？」
　「い、い、言えない。」
　なんとも揶揄いがいがある子供じゃ。
　「はっきり言うてくれんと。謂れのない言い掛かり、濡れ衣、冤罪はごめんじゃ。」
　奏美はイヤイヤと頭を振って抵抗するがそのような、我儘を通すわけにはいかぬ。
　立ち上がり奏美の顎をクイッと持ち上げ上からのし掛かるように顔を近付ける。
　「答えぬか！」
　至近距離で落とされた万雷の怒号に奏美の瞳が恐怖に染まる。
　「好実先生がか、烏丸君の・・・お、おチンチン舐めて」
　「なんじゃ？それでは儂が好実先生にHな事をしたのじゃなく好実先生が儂にHな事をしたんじゃないか。」
　揚げ足を取っては重箱の隅を楊枝でほじくるようにネチネチと言葉で嬲る。
　「恐いのう。言葉一つで加害者と被害者がひっくり返りよるわ。」
　現場を目撃した。
　最強と信じてきった手札があっさり破られ奏美は進退極まった。
　これで攻撃の手を緩めるのは素人じゃ。
　「で？お前はそれを黙って見ていたのか？」
　奏美は顔を叛け目を逸らそうとするが顎を捕まれていてはどうにも出来ぬ。