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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第4章 Valet & Earl 〜従者と伯爵〜
「…マダム…。俺は…」
…運命のひと…か…。
その瞬間、不意打ちのように脳裏に北白川伯爵の端麗な…そして優しい貌が浮かんだ。

狭霧は思わず息を呑む。

…何を考えているんだ…!
伯爵が…旦那様が俺の運命のひとな訳がないじゃないか!

慌てて首を振っていると、バルコニーの扉が開き、シャンデリアの灯りの眩い煌めきと華やかな音楽とともに、朗らかで温かな声が響いてきた。

「リーズお祖母様…!
ここにいらしたのですか?
ずっとお探ししていたのですよ」
長身の極上の正装姿の美しい青年がにこやかにこちらに歩み寄る。
蜂蜜色の美しいブロンドに地中海の海の色の瞳…。
整った…そして華麗な容姿は、まるでデジレ王子のようだ。

「あら、ジュリアン。
見つかってしまったのね。
わたくしは今、美しいジャポネーゼの従者さんと密かにワルツを楽しんでいたのに」
老貴婦人は悪戯っぽく肩を竦める。

「お祖父様が天国からやきもきしていらっしゃいますよ。
…しかし、リーズお祖母様がバルコニーで美青年とワルツだなんて…。
我がロッシュフォール家始まって以来の大ニュースではないですか?」
…ねえ?monsieurキタシラカワ?
と、青年は背後を振り返る。

「まさにそうだね、ジュリアン。
クイーン・リーズとバルコニーで踊れた私の従者は、かのナポレオン・ボナパルトと並ぶ英雄と評されるだろうね」
北白川伯爵が愉しげに美しい眼を細めていた。

「…へ?」
…リーズお祖母様…ジュリアン…ロッシュフォール家…クイーン・リーズ…。
漸く、すべての単語がパズルのようにぴたりと組み合わさった。
狭霧は恐れ慄き、後退りしながら叫んだ。

「え〜ッ!?
ま、ま、まさか…マダムがクイーン・リーズ⁈
あ、あ、あの、フランス社交界や政界を牛耳っている超超おっかない鋼鉄の女王様⁈」
驚きの余り本音まで溢れ出し、狭霧は慌てて口を押さえる。
「あわわ…!」

マダムがくすくすと笑い出す。
「やっぱり貴方は面白い青年ね。
…monsieurキタシラカワ。
美しくチャーミングな従者さんを持てて僥倖でしたこと」

「…恐縮です。マダム・リーズ」
北白川伯爵は恭しく胸に手を当てた。

…老貴婦人…エリザベス・フランシス・ド・ロッシュフォールは呆気に取られ声も出ない狭霧に、少しも怒らずひたすらに可笑しそうに笑い転げたのだった。


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