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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第4章 Valet & Earl 〜従者と伯爵〜
「…実に楽しい夜会だったな。
今夜の夜会で話題を攫ったのは他でもない、君だよ。狭霧」
北白川伯爵が、帰りの車内でしみじみと感想を漏らす。

「…もう…勘弁してくれ…じゃなくて、勘弁してください…」
隣りの座席に座り、狭霧は落ち込みの余り、頭を抱えている。

…どうしよう…。
俺は、フランス一、気を遣わなきゃいけない大人物と気安く踊って、挙げ句の果てに結構な暴言を吐いてしまったんだ…。

「気にすることはない。
マダム・リーズは近年稀に見るほどにご機嫌麗しくお帰りになったのだから」
「…そう…なんですか…?」
「ジュリアンが驚いていたよ。
あんなにご機嫌なお祖母様は久々に見た…とね」
「…はあ…それなら…良かった…ですけれど…」
…マダム・リーズが気を悪くしていないなら、良かった。
狭霧は自分の失態になんとか折り合いをつける。

「…旦那様に、ご迷惑をお掛けしなくて良かったです…」
それが一番気掛かりだったのだ。

「おや、私の心配をしてくれていたのか?
嬉しいね」
伯爵は大袈裟に眼を見張り、狭霧の貌を覗き込む。
…伯爵の眼差しは、どこか楽しんでいるような…狭霧を甘やかすような色を帯びていた。

狭霧は真剣な眼差しで伯爵を見つめ返した。
「そりゃ…そうですよ。
俺…私が失態したら、旦那様のお名前に傷がつく。
いくら私がまだ未熟な従者でも、それだけは絶対にしてはならない…と、肝に銘じています」
…でも…
と、狭霧はまた頭を抱えた。
「…マダム・リーズとは知らなかったから…余計な話をたくさんしてしまったんです…!
ああっ!もうっ!自分が嫌になる…!」

伯爵が微かに笑みを漏らす。
「まあ、落ち着きなさい」
「そんな簡単に落ち着けません!」

…じゃあ、ひとつ、おまじないをしてあげよう…。

囁く声に貌を上げる。
…と、そのまま、しなやかに顎を捕らえられ…

「…あ…っ…」
夜間飛行の薫りに抱かれる。
息を呑む間もなく、そっと触れ合うだけの静謐なキスをされた。

呆然とする狭霧の眼の前に、北白川伯爵の甘く優しく…微かに大人な色香を含んだ微笑みがあった。

「…ほら、効き目があっただろう」
歌うように、告げたのだ。




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