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海に映る月の道 〜last tango in Paris〜
第4章 Valet & Earl 〜従者と伯爵〜
「…思い出したか?
僕だよ。西条だ」
…別にお前の名前なんか思い出してはない。
心の中で毒づく。
狭霧が黙っているのをよいことに、男は馴れ馴れしく距離を詰めてくる。
「…お前、北白川伯爵の従者になったんだな。
上手くやったなあ。
さっき、見かけて驚いたぜ。
北白川伯爵は従者を付けないことで有名だったんだ。
あのひとは美意識がずば抜けて高いからな。
ちょっとやそっとの見た目の良い男では、納得しなかったそうだ」
…それがお前とはね…。
あからさまに下卑た口調で笑った。

狭霧はむかむかと不快な感情が湧き上がるのを堪えた。
ここで歯向かえば、奴の思う壺だ。
こんな低俗な輩は無視に限る。

黙ったままの狭霧に、西条はやや苛立ちながら、挑発的に近づいてくる。
「…おい。
お前、いくらで買われた?」

言っている意味がわからず、眉を寄せる。
初めて狭霧が反応を示したので、西条は嬉しそうに言葉を重ねた。
「…北白川伯爵にいくらで買われたんだ?
彼は大貴族だからな。
しかも今は独身ときている。
お前のような男娼を囲える金は唸るほどあるだろうよ。
…ああ、だけど彼が男もイケるとは知らなかった。
プレイボーイなのは知っていたが、そっち方面の噂はついぞ聞かなかったからな」

「…何を…」
腑が煮え繰り返るような怒りを覚える。
このクズのような男は、伯爵が金を出して自分を買ったと思っているのだ。
自分のことはいい。
何を言われても構わない。
けれど、ただの親切で自分のような者を拾い上げ、従者にしてくれた伯爵を悪し様に言うことだけは許せなかった。

きっと睨みつけると、西条はにやにやと嗤った。
そうして、狭霧の肩をいやらしい仕草で抱き、下卑た口調で囁いた。
「…お前、もう北白川とは寝たんだろう?
だから従者に召し抱えられたんだろう?
お前は床あしらいが上手そうだもんなあ。
…山科を誑し込んだ手管で今度は北白川を誘惑したのか?
山科が殺されてまだ数ヶ月だっていうのに、やっぱり淫乱な男娼は違うな」

頭の中で、何かが弾け飛んだ。
北白川伯爵を侮辱しただけでなく、和彦のことも揶揄するように口にした男。
この下劣な男を断じて、許すわけにはいかなかった。
肩に掛かる腕を振り払う。
狭霧は怒りを押し殺しながら、唸るように告げた。

「…もう一度、言ってみろ。
このクズ野郎」








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