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ターゲットはシニア
第1章 プロローグ
「真知子さんは問屋さんの事務をやってたんですよね。何か資格とか持ってます?」
私はいいえ、と首を振った。
「うちの介護事務所は資格がなくても頼めば入れてもらえると思うけど、医療請求とか介護請求ってのがあってね。パソコンも正確に打てなくちゃいけないし、覚えないといけないルールが山ほどあるの。結構難しいんだけど、どう?頼んでみる?」
「うーん、自信ないです」
「何でもいいから、どうにかして生きていかないと駄目。ハローワーク行って求職の手続きするのよ。一人で行ける?何なら私も」
「一人で行けます。ブランクはあるけど、私も一人前に働いていたんだから」
「あら、ごめんなさい。でも時間はあまりないわよ、明日にでも行かないと。それとこの団地に住み続けようと思ったら、大阪府に何か申込書みたいなの出さないといけないはずよ。お母さんが世帯主だったんでしょ?」
「うん。そっか、ぼんやりしてる暇はないわね」
「森川さんはあたしと違って美人だし歳の割にスタイルもいいし、水商売もいけるかも。あ、ごめんなさいね。でもその美貌は利用しないと損だよ」
「それは無理。人前に立てる体型じゃないし」
「何言ってんの。あたしよりスリムじゃないの。あたしなんかボヨンボヨンだけど腐りかけがいいって人、いっぱいいるんだから。でもまあそれは最後の手段ということで。とにかくあたしは心配で仕方ないの。真知子さんて誰にも相談しないで、じっと我慢しながら餓死しそうなタイプに見えるから」
「わかりました。何かあれば必ず相談させていただきます」
私がそう答えると、洋子さんはようやく腰を上げた。彼女が帰ると私はすぐに母の通帳を開いた。残金は三万二千と端数、それだけだ。
他に通帳とかないかしら、と母の部屋をあちこち探してみたけれど、これきりのようだ。
母の年金はもう入ってこない。つまり今のままだと来月の家賃を払うとほとんどお金は残らないことになる。
翌日。不安に駆られた私は午前中にハローワークで手続きをして、求人データベースを覗いた。しかし自分に出来そうな仕事は見つからない。その帰りに府営団地の管理センターに寄って、部屋の地位継承の申込みも済ませた。
翌日も、その翌日もハローワークに行ったけれど、仕事は見つからなかった。
私はいいえ、と首を振った。
「うちの介護事務所は資格がなくても頼めば入れてもらえると思うけど、医療請求とか介護請求ってのがあってね。パソコンも正確に打てなくちゃいけないし、覚えないといけないルールが山ほどあるの。結構難しいんだけど、どう?頼んでみる?」
「うーん、自信ないです」
「何でもいいから、どうにかして生きていかないと駄目。ハローワーク行って求職の手続きするのよ。一人で行ける?何なら私も」
「一人で行けます。ブランクはあるけど、私も一人前に働いていたんだから」
「あら、ごめんなさい。でも時間はあまりないわよ、明日にでも行かないと。それとこの団地に住み続けようと思ったら、大阪府に何か申込書みたいなの出さないといけないはずよ。お母さんが世帯主だったんでしょ?」
「うん。そっか、ぼんやりしてる暇はないわね」
「森川さんはあたしと違って美人だし歳の割にスタイルもいいし、水商売もいけるかも。あ、ごめんなさいね。でもその美貌は利用しないと損だよ」
「それは無理。人前に立てる体型じゃないし」
「何言ってんの。あたしよりスリムじゃないの。あたしなんかボヨンボヨンだけど腐りかけがいいって人、いっぱいいるんだから。でもまあそれは最後の手段ということで。とにかくあたしは心配で仕方ないの。真知子さんて誰にも相談しないで、じっと我慢しながら餓死しそうなタイプに見えるから」
「わかりました。何かあれば必ず相談させていただきます」
私がそう答えると、洋子さんはようやく腰を上げた。彼女が帰ると私はすぐに母の通帳を開いた。残金は三万二千と端数、それだけだ。
他に通帳とかないかしら、と母の部屋をあちこち探してみたけれど、これきりのようだ。
母の年金はもう入ってこない。つまり今のままだと来月の家賃を払うとほとんどお金は残らないことになる。
翌日。不安に駆られた私は午前中にハローワークで手続きをして、求人データベースを覗いた。しかし自分に出来そうな仕事は見つからない。その帰りに府営団地の管理センターに寄って、部屋の地位継承の申込みも済ませた。
翌日も、その翌日もハローワークに行ったけれど、仕事は見つからなかった。