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天然少女の夏休み
第1章 天然少女
 僕は立ち膝になりナユカの腰に手を回した。

 僕の両肩に小さな手が触れるが、押し返されるようなことはなく、ただ静かに添えられるだけ。それからお腹に顔を埋め、上目遣いにしょうを見上げる。

 まるで主人に縋る奴隷のように。
 卑しく、浅ましく。

「じゃあ痛くしなかったらいい?」

 哀願する。
 もはや見栄もプライドもなかった。

 きっと僕は、いまにも泣き出してしまいそうな顔をしていたんじゃないかと思う。

 ナユカは自分よりも遥かに年上である、本来なら自分を保護する立場にある人間の無様な姿に困惑しているようだった。

 身体を好き勝手にされるのは嫌だが、泣かれるのも困る――そんな表情だ。

 根が優しい娘なのだろう。

 追い打ちを掛けるように、僕は顔をくしゃくしゃにして、

「お願い」

 と、涙声で彼女に訴えかけた。

 子供を騙すことの、なんと容易いことだろう。

 ナユカは観念したように鼻から息を漏らし、
「ちょっとだけね」

 うんざりした声で僕の望みを受け入れた。
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