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狂愛の巣窟 〜crossing of love〜
第10章 【狂愛の巣窟〜ラスト・シーン〜】







「おかえり」




何もかもわかりきった顔で出迎えてくれる亨さん。
優しく微笑んで「雨、大丈夫だった?」と心配してくれる。
違う男の匂いをつけて帰って来た私を抱き寄せキスも。




「疲れただろ?ゆっくり休んで」




「………はい」




亨さんは一度も責めたことがありません。
嫉妬や怒りに満ちたお仕置きセックスがあったとしても、不貞行為に関して問い質したりはしない。
最後に抱くのは俺にしてね、とだけ。
戻って来たらそれで良いみたい。
だからといって野放しというわけではないけれど。




「ごめんなさい」と言っても責めてこない。
お風呂まで沸かしてくれていて至れり尽くせりだ。
どれだけ跡をつけてきても上書きしてくれる。
今まで必ず上書きしてくれていた。
それなのに。




「ごめん、今日は仕事持って帰って来ちゃってて、遅くなるから十和子は先に寝ててね?」




お風呂からあがってもそのように言われました。
お仕置きセックスはおあずけのようです。
それが、怖くて堪らない。
もしかしたら、もうすでに愛想が尽きているのかもと考えてしまう。




「十和子、おやすみ」




「おやすみなさい……」




そっと抱き寄せて、前髪にキスされて、顔を上げたら唇にもキスが降ってきた。
でも、それだけ。
こんなこと、未だかつてない。
終わりの、始まりだろうか。




「そんな目で見つめないで?襲いたくなるから」




「……ごめんなさい」




「謝らなくて良いよ、おやすみ」




それ以上は何もしてこない亨さんに違和感を感じながら寝室へと向かいました。
その夜、亨さんがベッドに来ることはなかった。
夜中に一階へ降りてみると、ソファーで寝ている姿を見ました。




疲れきった顔。
着替えずにシャツのまま、パソコン開きっぱなしで資料もテーブルに散乱してる。
お仕事、上手くいってるよね…?
私の為に早めに切り上げたり、無理してるなんてことない…?
昨日も、本当は家で待ってることなかったのに。




帰りが遅くなると知らせたことで居ても立っても居られなくなったのなら、私は亨さんの傍に居ることは許されるの…?
こんなことしてたら、いつか亨さんが壊れてしまうんじゃ。
目の下にクマも出来てる。
そっと持ってきたブランケットを被せた。







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