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ぎゅっとして。
第1章 1.待ち遠しい
―ガタンゴトン。

ちょっとした揺れに足を動かされる。
思わず、吊り皮をつかむ手の力が強くなる。

流しそうめんのように、現れては次々と消えゆく景色をぼーっと眺めていた。
だんだんと高くなっていく建物に視界を遮られる。

車内はそこまで混んでいない。
むしろ、普段乗るときよりは、だいぶ少ないと言えるだろう。

これからどこかに行くのであろうファミリーだったり、やけにイチャイチャして見せつけてくるカップルもいる。二人だけの世界を作りあげている老夫婦だったり、誰が何をしても決して動じなさそうな一人の中年男性もいたりする。

結構、人って移動するものなんだな、と改めて感じた。


ふと、窓で反射して見える自分の姿をまじまじとチェックした。

朝早く起きてセットした髪。普段の外出は着古したパーカーだが、今日はブランドの服。全てブランドものは逆にダサいので、あえて上着だけお気に入りのブランド服にした。
自分の細身であるというスタイルを活かせるよう、すらっとしたズボンを履いてカジュアル系にした。

うーむ、我ながら良い出来だ。

顔に、朝食べたご飯粒がついていないか確認してみる。


…別に、ご飯粒は付いていないが。

口角が、ほんのわずかだが上がっていた。


そう、何を隠そう、今日は彼女と初めてのデートなのだ。
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