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性神がこの世に放った獣たち~ 叛
第2章 裏切り
 私の目に飛び込んできた獣たちの精液で、私の心臓は止まりそうになった。妻のおま×こを見ることができても、妻の顔を見ることはできない。私には妻の顔を見る勇気と自信がないのだ。
 自分が嫌になる。私は本当にすみれの夫なのだろうか? 男と言えるのだろうか? 私は、私自身に何度もそう問いかけてきた。
 この女を愛したことが今まであっただろうか? 心を寄せたことが一度でもあったと言えるのだろうか? イエスと答える自信がない。
 おそらく妻も私も、二人の子供の為に不満に目をつむってきた。私は自分の出世のためにすみれと結婚した(もっともそうしなければ私には未来はなかった)。学者一家に育った妻だって、教授夫人と言う立場を得るために、渋々(嫌々と言ってもいい)私を夫としたのだろう。
 夫婦は所詮他人。しかし私たち夫婦は、互いに仮面を被った他人であった。私は仮面の下のすみれを知らないし、すみれも仮面の下の私の顔を知らない、困ったことに、私とすみれはその仮面を何枚も持っている。その仮面を使い分けながら、私とすみれは生きてきた。
 仮面の下の顔に興味を持ってはいけない。仮面の下の顔を知るということは、自分の本当の顔を知ることになるからだ。
 私は妻の仮面の下の顔を見てしまった。そして、そのことによって、私は自分の仮面の下の顔を知ることになった。ひっそりと隠れていた私の本性。
 妻の本当の姿と私の本当の姿。
 
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