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横を向いて歩こう
第5章 甘くて甘すぎて甘い
「あたし、今弟と住んでて。」

「そうなんだ。」

帰りの車の中であたしは自分のことをつらつらと話し始める
そんなときも彼のハンドルさばきに見とれてしまって濡れそうのなんの

「男物の下着、びっくりしたでしょ。」

「あぁ、確かに。」

彼は落ち着いていた

あたしは何故か泣きたくなる
健ちゃん、あたし健ちゃんに言ってないことまだたくさんあるのに

松下とだってほんとはただの同僚じゃないし
誠とのこともあたし黙ってるし

何でそんなに優しいの?

こちとら濡れるんだから


もうすぐ家につく
一番話したいことを話さなくちゃ

「あたし、実は離婚してて。」

「そうなんだ。」

「ずっと落ち込んでたけど、今健ちゃんと居れて幸せ。ありがとう。」

彼は驚かなかった
それどころか
それどころかあたしを気遣って頭を撫でてくれる

大きな手
もう濡れるしかない


「俺知ってたけどね。」

「へ?」
 
「いや、総務だからさ、」

「あ、、。」

彼の方が一枚上手かもしれない

「でも改めて打ち明けてくれて嬉しいよ。」

「ほんと?」
 
「幸子ちゃんとはこれからも本気で付き合っていきたいと思ってる。」

あーんもう濡れちゃう
パンツの中がぐちゅっとしてきた


アパートの前に車が止まって頭を引き寄せられて
ああキスがくるわ

うっとりしていたのだが
あたしの目には別のものが映し出された

松下のバイクが停まってる!

そうとも知らず健人の唇が舌が入ってくる

健人の寵愛を受けながらも半目を開く
松下が現れないかヒヤヒヤしていた
ゴルフの帰りで太一と家で飲んでるのかもしれない

でも今は困る


「健ちゃんのことももっと知りたいな。」

運転席からバイクが見えないように
あたしは微妙に体を傾けてあっけらかんと話を戻す
冷静に冷静に

「俺なんて大したことないから。」


いくら総務でも松下のバイクまでは把握してないよ、ね

安堵しつつ出来立てなりたてホヤホヤの恋人を見送る


いつか彼の過去を知る日がくるのかもしれない
冷静でいられないかも

それでも彼とはもっともっと深く関わっていきたいと思うのであった





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