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北の軍服を着た天使
第3章 Episode 3
「さ、話を本題に戻しましょう。今までは電話やメールでの会話でしたけど……ここに来て、我々とともにコーヒーを飲んでいると云う事は流川さんの中で我々に対する接し方が決まったと云う事ですね?」
真っ直ぐに私の目を見つめる李さん。李さんの隣にはソファーに深く腰掛けているキム・テヒョンが居る。
「決まったというか…正直、まだ混乱はしています。」
「確かに北朝…共和国と云う国に旅行に行った事もあるし、他の人よりは身近に感じていたかもしれないです。……でも、今、日本に居る私の目の前に貴方達二人が居ると云う事は、やっぱりそう簡単に信じれるものではありません。だけど……それが事実なんだから仕方ないな、と。そう思う様にしました。」
「私は日本人です。日本人としての誇りが有り、この国を愛しています。だから、貴方達に頼まれてもそれが日本にとって害が在ると判断した場合、私は貴方達の頼みを聞きません。──でも、スターロード株式会社にとっても私にとっても貴方二人はとても良いビジネスパートナーです。」
「中国人と日本人として、この国の中に居る間ではビジネスパートナーとしての絆を築いていきたいと思っています。」
「………なるほど。分かりました。」
「ただ、個人的に聞いてほしい話ですが……私は共和国内で死にかけていた時に、キム・テヒョンに助けられた命で生きています。彼に又、会いたいと心から願っていました。きっとそれは、彼に助けられたと云う事実プラス、彼も❝子は国の宝だ❞という私の意見に心から納得してくれたからだと思います。それを踏まえて、私は共和国の未来が良くなれば良いと…。そう本気で考えている部分もありますので、それはお忘れなき様お願いします。」
今度は目を逸らさずに、逃げ腰にならずに、ハッキリと自分の意見を伝えられた気がする。李さんは私の言葉を聞くと、何も言わずに淡々とアイスクリームを平らげデスクに向かう。
嫌味も言われず、帰れとも言われず、真面目な顔してパソコンと向き合っている所を見ると、返事はせずとも私の言いたい事は分かったと言っているに近いだろう。
「流川リサ。」
「は、はい!」
「今の話を聞いて、お前の考えは大体分かった。それならば資本の論理を知り尽くす人に聞きたい。共和国にとって最高の未来とは何を示すと思う?」