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鬼の哭く沼
第7章 花は綻ぶ

時は平安初期、人と魑魅魍魎、妖の類が未だ分かたれずに一つの世で生きていた時代。

近江の国の大野木殿の娘が神社詣の帰りに神隠しに遭った。
家人総出で捜索するも見つからず、夜盗にでも襲われたかと皆が諦めかけた。だが神隠しから一月後、ふらりと家人の元へ戻って来た。娘はその時、腹に子供を身籠っていたという。


「娘ヲ攫イ、身籠ラセタノガ俺ノ父親ダ」


人としての名を伊吹弥三郎といい、神話の大妖、八岐大蛇の八草の一人だった。
八草というのは八岐大蛇が須佐之男命に敗れた後、逃げ延びた先で人の娘との間に作った八人の子供の子孫を言う。

その内の一人であった弥三郎は父・八岐大蛇と同じ蛇の血を受け、角を持つ蛟としてとある沼の主をしていた。ある日、自分を祭る神社へ詣でに来た娘を見染め、攫って子を為したのだ。
身籠った娘は三十三月もの長い間腹に子を宿し、やがて一人の男児を産み落とした。母親はその時、難産の末に命を落としたという。


鬼の子は母を殺して生まれるから、忌子と呼ばれる。


夕鶴の言葉を思い出して、香夜はぎゅっと手を握り締めた。相変わらず、須王は淡々と言葉を続ける。


「母親ノ親ドモハ俺ヲ殺ソウトシタガ、蛟ノ祟リヲ恐レテ止メタ」


生まれた赤子は、普通よりも二回りも三回りも大きく、且つ生まれながらに髪も歯も爪も生え揃っていた為「鬼子」として恐れられた。
娘を殺したに等しい鬼子は殺してしまいたいが、祟りが怖くて手が出せない。そんな子供を持て余し、大野木殿は生まれたばかりの赤子を隣村の寺に預けた。


「俺ハ寺デ稚児トシテ幼少時ヲ過ゴシタ」


寺の者達も皆、鬼子の須王に冷たかった。
与えられる仕事は人一倍、それなのに食事や休息は人の半分以下。いつも腹を減らし、日が暮れると裏山に忍び入っては小動物を狩り、山菜や果物を採って飢えを凌いだ。
そんな中唯一、寺の老いた住職だけが須王を可愛がり、手習いをさせてくれた。物覚えが早く利発であった須王は、見る間に兄坊主たちを凌ぐ知識を得ていった。




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