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鬼の哭く沼
第7章 花は綻ぶ
香夜が頷くのを、その心が落ちるのを待っているのだ。
香夜から離れた唇が、頬をなぞって耳朶を掠める。強く、軋む程に抱き締められた。吐息が、微かに震える苦しげな掠れ声と混じって香夜の耳に届く。
「……お前を抱かせてくれ、香夜」
女を抱くのに一度としてした事の無いであろう懇願。
香夜は一つ息を吸い込み小さく頷くと、須王の首に腕を回し伝わる熱と肌の匂いに身を委ねる。
「…私、も」
貴方に。
自分の心が落ちる音を、香夜はその時確かに聞いた気がした。