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ある冬の日の病室
第4章 別れの予感~からの……
 何度射精したのか、僕にはその記憶がない。
 里奈はずっと僕のペニスをしゃぶって、僕は必死に射精を堪えて、でも結局僕は里奈の技に負けて、どろどろした白い液体を里奈の口の中に発射し続けたのだ。
 きっと里奈は、僕のペニスの匂いや精液の味を記憶しているのかもしれない。僕はそれが恥ずかしいことだとは思わない。できることなら、僕のそういったすべてを里奈の中に残しておきたい。僕は強くそう思った。僕のことを忘れてほしくない。
 どれだけ射精しても疲れなんて感じなかった。でも不思議なのだが、里奈の手でいかされた時と同じで、いつの間にか僕は深い眠りの中に落ちていった。おそらく僕の初体験が、そうさせているのだと思う。オナニーなんかでは味わえないリアルな女の手と口。
 悦楽に誘われて、今まで出したことがないような大量の精液。白くてねばねばした液体は、きっとこの日のために僕の体のどこかに隠れていたのだと思う。
 眠りの世界は真っ白で、夢を見ることもなかった。
 できることなら僕は、その世界にずっといたいのだけど、残念ながら病院の日常は、それを許してくれない。
 カタコトと周りから聞こえる音、それから毎朝聞かなければならない足立看護師のつまらない冗談。
 でも、それをやり過ごす余裕が今の僕にはある。里奈の存在。里奈がいれば僕にできないことはない。
 里奈が本当の母親のように思えた。そして僕は嫉妬した。僕と同じ名前の翔。一度も会ったことなどないが、同じ名前の翔を羨ましく思った。
 同じ名前の翔は、きっと美人の母親のことが自慢なのだろう。そう言えば、僕はくそババぁのことをずっと忘れていた。どんな顔をしていたのかさえ忘れていたのだ。
 僕は、口うるさい自分の母を自慢に思ったことなど一度もない。中学の時だったと思う。母親に腹を立てた僕はこう言った。
「〇〇は〇〇でも全然違うよな、くそババぁ」
 〇〇は僕の母と同じ名前の女優さんの名前だ。だが、僕の母親は僕よりも一前上手だった。
「私が女優の〇〇だったら、お前のお父さんとは結婚していないから、この馬鹿息子」
 もちろん僕の負け。唖然として僕は言葉を失った。そんなことより少しだけ親父が可哀そうに思えた。
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