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ある冬の日の病室
第7章 妖艶の宴
 街中では人と会うことがそんなになかったのに、駅に入るとたくさんの観光客らしき人たちがいた。外国から来た人もいるようだ。 
 駅に入ってわかったことだが、スキー以外、この駅一つで、この街は完結している。土産、食事、雑貨、驚いたのは駅の中に温泉があることだった。これじゃあ温泉街に足は向かない。
 僕は早速温泉に入った。病院では何度か風呂に入っているが、病院の風呂には残念ながら温泉は引かれていなかった。
 風呂から上がると、数十種類の日本酒を飲み分けることができる店があったので、僕はそこで五種類の日本酒を飲んだ。温泉からの日本酒。体の緊張が解けていく感じがしたが、それでも里奈のことは忘れることができない。
 四十ℓのザックを背負って僕は待合室に向かった。椅子に浅く腰掛けると、前方にある観光案内のパンフレットが目に留まった。僕はぎょっとした。パンフレットにではなく、その横にある街の広報誌の表紙が僕を驚かせたのだ。(この顔どこかで見たことがある)
 ザックを席において僕は立ち上がり、その広報誌の方に向かった。広報誌を手に取る。表紙にはこう書いてあった、【おめでとう!全国中学校冬季大会スキー回転部門優勝!〇〇中三年内田翔君】
 僕と同じ名前のこの子が「僕、彼女百人いるんです」と言っても、僕はこの子の言葉を疑うことはない。仮に僕が彼の同級生だったとしたら、僕は絶対に彼と一緒に歩かない。女の子の視線は僕に寄ることなく、僕と同じ名前の翔に向かうからだ。
 悔しいくらいにカッコよくて、笑顔が爽やかで、全身清潔そのもので、そしてその顔の中に少しだけ里奈の面影があった。
 でも……でも何かが引っかかる。どこかが変だ。心臓がバクバクと音を立てる。手が震えてきた。いや、体が震えている。この表紙のどこに僕は違和感を覚えているのだろうか?
 僕はもう一度広報誌の表紙を隅から隅まで確認した。頁を繰る。内田翔のことが書いてある頁は直ぐに見つかった。インタビューに答えるような形で彼はこう言っていた。
 優勝を目指してひたすら練習してきたこと。監督の指導、同級生の励まし、それに縁の下の力持ちになって支えてくれた下級生に感謝していること。地域住民の応援が励みになったこと。そして……。呼吸が止まった。里奈のことを、母親のことを彼はこう言っていたのだ。
 
 
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