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犬山君
第1章 犬山君
「…落ち着いたか?」
「ん…どうして…犬山君はみんなにあんな事言われないといけないの?犬山君何も悪いことしてない…」
そう言うと犬山君は私の手を握った。
「……俺さ、中3の秋に母親を交通事故で亡くして…その日から笑えなくなってたんだ。勇士はまだ小さくて寂しい思いとかさせたくなくて勇士の前だけなんとか笑うので精一杯だった」
私は犬山君の手を握り返した。
「学校でも誰とも話さなくなってそれまで仲良かったクラスメートも俺とどう接していいかわからなかったんだろうな…そんな状態のまま卒業して。高校入っても立ち直れなかった。勇士の面倒見るのも忙しいし、余裕なかったんだ…このまま一人でもいいやって思ってた」
「…犬山君…ツラかったよね…」
「勇士が大きくなったらもう笑えなくなると思ってたけど…花のおかげでまた笑えるようになってた…ここで花と話した時家族以外の人とまともに普通に笑って話せてすげぇ嬉しかったんだ」
最初にここで話した時犬山君が泣いてたのを思い出した。
「犬山君…これからは花が犬山君の事支える…今度は花が犬山君の事守るから…」
「ありがとう…でも、もう充分花には救われたんだ。ふっ…しかし、こんな小さい身体して俺のこと守るって…それは俺の台詞だろ」
私達は一時間目が終わったところで教室に戻った。